
水生大海さんの作品です。
まず目に入ったのはタイトルの「食堂」という言葉と、食材に囲まれた優しそうな男性の表紙で、これは好きなやつだとビビッときました。
丁寧な食事や、栄養を大切にしていそうな雰囲気が伝わってきて、きっと前を向けるような温かい物語なんだろうなと。
舞台は、古いマンションの中にある小さな食堂。
そこを骨折した叔母のピンチヒッターとして切り盛りするのが、雨森涼真という男性です。
住人たちに深く踏み込みすぎるわけでもなく、でも、いつもそっと見守ってくれる。
その絶妙な距離感がとても素敵で、それでいて優しく、少し謎めいた感じで気になる人でした。
住人たちは、それぞれ悩みや問題を抱えていて、雨森さんはその様子をさりげなく見抜き、その人に合った料理や優しい言葉で寄り添います。
でもこの物語のいいところは、すべてがきれいに解決するわけではないところ。
雨森さんにそっと背中を押してもらった住人たちがそれぞれ決断していくんだろうというところまでで、現実に寄り添った形で物語が閉じていきます。
その自然さも心地よかったです。
読み始めてすぐ思ったのは、やっぱり栄養って大事だなということ。
分かってはいるのに、甘いものを食べすぎたり、夜中の暴飲暴食。
食生活が乱れてしまう事ってありますよね。
口に入れるもので体は作られている。
力を与えて、心も整えてくれる。
食べ物の力と、ぽろっと話せる場所や人の大事さ。
そんな当たり前のことを改めて思い出させてくれる1冊でした。
読み終えたころには少し心が満たされたような気持になります。
この本を読みながら、この場所も、そんな時間を過ごしてもらえるような場所であれたらいいな、そんなことを思いました。
さて、今日はなにを食べましょうか。
★★★☆☆
城崎温泉 泉翠 冨田 歩
https://kinosaki-sensui.com/
