城崎温泉 泉翠 |若女将の読書 | 真下みこと | かごいっぱいに詰め込んで |
2025.01.02
かごいっぱいに詰め込んで
かごいっぱいに詰め込んで
かごいっぱいに詰め込んで
真下 みこと

真下みことさんの作品です。

スーパーを訪れる5編の「生活」。寿退社をして主婦となり、子どもが手を離れた美奈子。社会に出て働こうと思い立つが‐(おしゃべりなレジ係)。
高校生からの癖によって痩せた大学生の流花。しかし「ぶた」と呼ばれた昔の自分を許せず‐(小さな左手)。
マッチングアプリで遊ぶ亮。自分がSNSで要注意人物として晒されていると知り‐(気をつけてください!)。
婚活アプリで結婚した咲希。出産した友だちに「次は咲希の番だね」といわれ妊活をはじめるが‐(なわとびの入り方)。
早期退職をした哲郎。再就職もできず、妻に愛想をつかされ、公園で昼食をとる日々が続き‐(不機嫌おじさん)

舞台はスーパーマーケット。色々な問題を抱えた人たちがセルフレジならぬ、ちょっとした会話もできる「おしゃべりレジ」での会話がきっかけで、良い方向にかじ取りしていける温かいカイロのような作品でした。

今はセルフが多くなって便利になってきたけど、人同士の何気ないやりとりでもらえる温かいなにかを気付かせてもらえました。カゴの中身しか知らない関係でも癒しになるし、なにかのきっかけになることもある。人間同士の繋がりって不思議で素敵。

特に『小さな左手』は好きでした。主人公が相手を許さないという選択をするのですが、過去に押し込めた怒りや辛さを自覚し、まず自分の本心に気づき、自分を守るという選択。許さないということで、当時目を背けた自分を許すということを選んだ主人公。一歩進んだ瞬間を感じ嬉しかったです。

心じんわり温まる作品を探している方、前向きになりたい方に、特におすすめします!短編なので読みやすいです。

★★★★☆

城崎温泉 泉翠 冨田 歩

https://kinosaki-sensui.com/

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