城崎温泉 泉翠 | 若女将の読書 | 重松 清 はるか、ブレーメン |
2023.09.01
はるか、ブレーメン

重松清さんの作品です。

小川春香、16歳。3歳で母に捨てられた彼女は、育ての親である祖母も亡くし、正真正銘のひとりぼっちだ。そんな彼女が出会ったのが走馬灯を描く旅をアテンドする〈ブレーメン・ツアーズ〉。お調子者の幼馴染、ナンユウとともに手伝うことに。認知症を患った老婦人が、息子に絶対に言えなかった秘密。ナンユウの父が秘めていた、早世した息子への思い。様々な思い出を見た彼女は。人の記憶の奥深さを知る。そんな折、顔も覚えていない母から「会いたい」と連絡が来るのだが……。

私の中で家族を書かせるなら重松さん!のイメージ。今回も期待を裏切らない仕上がりで…人生って色々あって、あるからいいんだ!という温かい気持ちになれました。

前半は死期の近い人の走馬灯を書き換えるというファンタジーで不思議な設定の世界に入るまで少し時間がかかりました。が、後半。主人公が病室にいるシーンはもう堪えきれない涙が・・

『幸せな思い出と、幸せそうな思い出というのは、違うんです』

『人は間違えます。間違ったことをしてしまいます。でも、それがとても大切になる時だってあります。間違ったことを全て切り捨てていったら、大切なことが残らなくなってしまうかもしれない。』

『悔いを残さないというのと、悔いをなくすというのは違う。悔いは残らないほうがいい。うん、それはいい。でも、なくすことはできないんだ、人間は、誰も。』

『悔いのない人生というのは、自分は一度も間違って来なかったという、ずいぶんずうずうしい人生かもしれないぞ』

人生の最後を素晴らしい走馬灯で終えるのも素敵だけど、、自分なら書き換えず自分の人生を見たいなぁ。悔しいこと、悲しいこと、人に言えないこと、誇れること以外の情けないことも含めて自分の人生ならどんなことも受け入れたい。それも自分の生きた証なのかなと。悔いのないようにいきる!ってよく聞くけど、悔いもありって視点をもらえました。

不思議で切なくてあったかいお話をお探しの方、お勧めです。大人を泣かす1冊です。

★★★★☆

城崎温泉 泉翠 冨田 歩

https://kinosaki-sensui.com/

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