桜木紫乃さんの作品です。
芸能界の先駆者にして伝説。その孤高の闘いを描く怒涛の長編小説。モロッコへ旅立ったカーニバル真子は日本で初めて「女の体」を手に入れた。帰国後、待ち構えていたのは雑誌のグラビア撮影と日劇での凱旋ショーの大喝采だった。が、「性転換お色気路線」だけでは芸能界で生き残れそうになく、歌手、地方興行などに打って出るものの追い詰められていく。小説でしか描けない実在の人物の孤独と苦悶に迫る大傑作。
なんという強烈なキャラクターなんだろうか。激しく自分を持っている主人公にすぐに引き込まれました。主人公秀夫が人生を、命をかけて自分を模索していく様はなんと強く美しいのだろう。バカ騒ぎしているように見えて心身に負担をかける姿は壮絶で・・
多様化といわれだした今とは違った時代。
バケモノ扱い
相手を傷つける好奇心を逆手にとって勝負している姿は、ギュッと切なくもあり。
こちらは続編ということでしたが、全然気づかずに楽しめました。
桜木節+秀夫の融合は、波乱万丈でドキドキが止まらず。余韻の残るラストでした。
「あたしは偽物の女なんかじゃなく、あたしの本物になりたいと思います。本物のあたしになれるよう、また一から鍛えてください」
「“女の体”になりたいのであって“女”になりたいわけではない」
「あたしは、あたしの本物にならなくちゃ」
性別に縛られない自由な生き方で、そのために自分自身と闘う姿。強い意志と、それを応援した母と姉にも乾杯!
性別どうこうは差し引いても、こんなにも懸命に生きる主人公の姿に自分は自分の本物なのだろうか?精一杯の本物だろうか?本気で生きているのだろうか?自分を活かす努力をしていないように思えてなりません。喝を入れてもらった気がします。
圧倒される生き方を感じたい方、昔の芸能界を覗いてみたい方、緊張感を感じたい方に特におすすめします。
★★★★☆
城崎温泉 泉翠 冨田 歩