よしもとばななさんの作品です。
愛は戦いじゃないよ。愛は奪うものでもない。そこにあるものだよ。たいせつなひとの死、癒えることのない喪失を抱えて、生きていく‐‐。凍てつくヘルシンキの街で、歴史の重みをたたえた石畳のローマで、南国の緑濃く甘い風吹く台北で。今日もこうしてまわりつづける地球上の上でめぐりゆく出会いと、ちいさな光に照らされた人生のよろこびにあたたかく包まれる全6編からなる短編集。
たいせつな人をなくした喪失、その中で感じる人生の喜び。
心をそっと撫ででくれる優しいタッチで寄り添ってくれる文章。決して大げさでなく日常のものとして淡々と流れていく時間。
さりげなさすぎて癒されたことにあまり気づかない、けど少し生きやすくなった。息しやすい。あの小説のせいかな?そんな感じの本が書きたかった作者の、本当にそんな感じの本でした。
‐なんとかなる。悲観でも楽観でもない。目盛りはいつもなるべく真ん中に。なるべく光と水にさらされて。情けは決して捨てず。‐
ここの部分、すごい好き。
よしもとばななさんの集大成を読みたい方、一人静かに過ごしたい気分の方、消化不良の気持ちを抱えている方、癒されたい方に特におすすめします。ちょっと楽に、ちょっと軽く、ちょっと幸せになれます。
★★★★☆
城崎温泉 泉翠 冨田 歩