湊かなえさんの作品です。
「通過したつらい日々は、つらかったと認めればいい。たいへんだったと口に出せばいい。そこを乗り越えた自分を素直に労えばいい。そこから、次の目的地を目指せばいい」
亡き夫に対して後悔を抱く女性と、人生の選択に迷いが生じる会社員。
失踪した仲間と、共に登る仲間への、特別な思いを胸に秘める音大生。
娘の夢を応援できない母親と、母を説得したい山岳部の女子大生。
コロナ禍、三十年ぶりの登山をかつての山仲間と報告しあう女性たち。
日々の思いを噛み締めながら、一歩一歩、山を登る女たち。頂から見える景色は、過去の自分を肯定し、未来へ導いてくれる。
山はよく人生に例えられますが、本当にそうなのか?登らなければわからない素晴らしい景色や自然の偉大さに惹かれつつも、運動が苦手な私には登山と人生の関係性を実際に確かめることはきっとなかろうと思います・・
が、即行動の大事さに改めて気づかされました。『いつか』はないかもしれない。
いつもの湊さんと思ったら大間違いのホワイト湊の作品です。山女日記の続編にあたる今作品ですが、これだけ読んでも問題なし。リアル登山は苦しいだろうと躊躇してしまう私ですが、リアルな描写の数々に自分が登って美しい景色をみたような感覚になれました。これぞ読書の醍醐味ですね♬
話に出てくる女性たちが『山』を力にしてこれから先を見上げていくストーリーにはスキッとした爽やかな気持ちになりました。どんなに今が大変でもそれは永遠じゃない、必ず先はあると信じる、そこに向かっていく。一年の始まりに良い1冊でした。
山に興味がある方、『再生』のワードに惹かれる方、女性の様々な生き方をのぞいてみたい方、湊さんが好きな方に特におすすめします。
★★★☆☆
城崎温泉 泉翠 冨田 歩