冲方丁さんの作品です。
わずか12歳で一条天皇の后となった、藤原道長の娘・彰子。幼すぎる入内、未熟な心。夫である一条天皇は優しく彼女を包み込むが、彼が真に愛した女性・定子の存在は、つねに彰子に付きまとう。しかし、定子が遺した子を抱きしめた日から、彰子の人生は動き始めた。父や夫に照らされる“月”でしかなかった彰子は、紫式部にも支えられ、やがて「国母」として自ら光を放ち出すー。平安王朝を新たな視点からドラマチックに描いた渾身の傑作長編。
源氏物語の紫式部、「この世をば 我が世とぞ思う 望月の 欠けたることもなしと思えば」のイケイケ藤原道長、陰陽師の安倍晴明、一条天皇の后対決・定子VS彰子。十二単のお姫様たちに蹴鞠をする殿上人たち。度重なる内裏の火事や、怨念、病になりすぐ引きこもる貴族たち。私の平安のイメージはこんな感じです。
当時の貴族たちは日記を書く人が多く、こちらの作品は史実に基づいてのフィクションで、当人である彰子の心情は不明ではあるのですが、ノンフィクションに近い感覚で読みました。
帝の愛に溺愛されるも、権力争いに巻き込まれ、出家。しかし、帝が離してくれずの内裏に戻り出産というジェットコースター人生の定子。
生まれながらに后となるべく両親の期待を背負い、入内するも帝は子どもいるし14歳でライバルの子を育てることになるし、ようやく夫と気持ちが通じると思うところで夫を喪う彰子。物語のような本当にあったお話。面白くないですか?
10年ひと昔、なんて言われていますが。1000年前ですから。同じ日本という国なのに今と常識や習慣が全く違っていて。ハリーポッターくらい世界観が違うんです。その感覚の違いっぷりがすごく楽しい。時代のうねりの中、懸命に生きる后たちの生涯は胸をうつものがありました。
こちらは平安王朝を彰子目線で書いてあるのですが、何もわからなかった12歳の子どもが陰謀と呪詛でみちた宮中を、愛で支えた87年の生涯というのは、ただただ圧倒され、お嬢様なだけと思っていた彰子の功績に尊敬しかありません。
ある程度、平安時代の知識がない方はこちらは正直読みにくいかと思います。私も藤原家が多すぎて家系図を何度チェックしたことか。血筋を守るということ、女性は道具でしかなくて。化学ではわからない不思議なこと、短命の時代だったので次々に人が亡くなっていくのは少ししんどかったです。でも読んで良かった!!
天皇家の歴史や平安時代、昔の日本に興味のある方、宮廷とはどんなとこだ?と思われた方、ひとりの女性が成長していく物語が気が好きな方、ノンフィクションが好きな方に特にオススメします。
★★★☆☆
城崎温泉 泉翠 冨田 歩