小林由香さんの作品です。
あなたは子どもの何を知っていますか、
何を信じていますか。
「悪魔の子」と噂される少年、良世。事故で娘を失った過去を持つ翔子は、亡くなった姉の形見で、猟奇殺人を実行し逮捕された父を持つ息子を育てることになる。良世は掴みどころなく何を考えているかわからない。不気味な行動も多く、翔子は子どもを育てる自信が持てず不安が募るが。
そもそもの設定がハードすぎる・・タイトルの「まだ」に引っかかり、ホラーな空気感。誰もいない部屋なのに誰かに覗かれているかのような読書時間でした。
自分の子を事故で亡くし、暗い過去を持つ不気味な親戚の子を育てる。え、出来る?
加害者家族の葛藤、SNS、いじめ、人間の多面性、いくつものテーマも織り込まれています。
負の連鎖はあるのか。純粋な無垢な状態で生まれてくる子どもが悪魔なわけない、環境が子どもを作る部分が大きいと思います。まだ世界が小さい子どもの心にかかる大きな負担を思うと切なかったです。
「僕のこと、嫌いになったら捨ててもいいよ」
良世が問いかける大人への質問が胸に刺さります。
読後改めて思う「まだ」の意味。
「子ども」とどう向き合うか、どんな「大人」でいたいか。自分への課題です。
苦しく、切なく、優しい、残酷、そんなお話でした。
緊張感漂う読書がしたい方、「家族」を考えたい方にオススメします。
★★★☆☆
城崎温泉 泉翠 冨田 歩