寺地はるなさんの作品です。
大阪北部にある老舗の遊園地。『うちはテーマパークじゃなくて遊園地』と言い切る名物社長に、1週間をそこで働く従業員目線でかかれています。
遊園地といった楽しい場所で、普段は注目されてないスタッフさんに焦点を当てるところが面白いです。
関西弁に、登場人物の不器用さや日常はとても身近だし、スルスルと読み進めました。御座候という回転焼のお菓子が出てきたところも馴染みがあるからちょっと嬉しい。
キッチリ働く人、なんとなく惰性で働く人、生活のために働く人。当たり前の事だけどそれぞれに葛藤や悩みがあって、必死で働いている裏側で抱えている思いもあって。共感を覚えたりグッと目頭熱くなるお話もあります。ほっこりお仕事小説といった感じです。
ここまでは表版の感想。以下、辛口しますので作家さんのファンの方は逃げて!
どうしても働きたかった場所じゃない、生活のため、生きるために働いている人が数人いたのが個人的に印象に残っていて。もちろん働く=お金を稼ぐ手段だし、仕事にかける熱意とかやりがいとかまでベクトルが向かない状況の人もいるんだなってのも理解しているつもり。ただお仕事小説ならもう一歩先の景色も見せてほしかった。モヤモヤ。まぁ現実感はこっちの方があるか・・
日曜日の山田さんの奥さん、最高!だけどこのサイリウムもヒロトのおにぎりの件もずるいって。簡単にグッとくるこさそうとしてるなって思った。
文句もいいましたが『苦手なことはカバーし合って、よりよい職場にしたい』という社長の懐の深さは素晴らしい。とても大きな人でした。
完成された人間はいないし、まだ途中の人もそれはその人の今後の人生の課題。ジャッジするなんておこがましいですね・・反省!
人に優しい話が読みたい方、じんわり暖かい気持ちになりたい方、心ほんわかしたい方、気軽に本を読みたい方、仕事に迷いがある方。オススメします。
★★☆☆☆
城崎温泉 泉翠 冨田 歩