原田マハさんの作品です。

原田 マハ
どしゃぶりの日もある。でも、雨はいつかきっとあがる‐‐。
病に倒れた最愛の父を支えるため、倉敷紡績で働くすてら。社長の大原孫三郎の知遇を得、送られた〈白樺〉で見たゴッホの絵と武者小路実篤のゴッホについての批評に心打たれたすてらは、「ゴッホが絵を描いたように自分は小説を書く」と、自身の道を定める。
マハさんの作品はハマることが多いのですが、こちらもとっても良かったです!
主人公の山中すてらに没入し、全力で応援し、次が気になってしょうがない内容でした。
読み始めてまず感じたのが今とは全く違う時代の空気。
時は明治末期。
文字が読めることも、学校に行けることも、本を読めることは一部の人の娯楽。
それがどれだけ特別なことだったのか、
読んでいるうちにじわっと伝わってきます。
そして主人公の山中すてらという少女。
この子は、とにかくまっすぐで、めげない、常に感謝し、周りの為に祈る。
環境や待遇に文句をいうわけでもなく、ただ前に進もうとする。
母親にはどうせ捨てるからとつけられた『すて』という名前を父親が想いを持って『すてら』とつけてくれました。
その想いを背負って生きるすてらを応援せずにはいられません。
また個人的には倉敷に旅行したことがあるので、その風景や紡績の場を想像出来てより感慨深かったです。
夏目漱石をはじめとして、実在の人物がたくさん出てきて
すてらと関わっていくのも楽しい!
あの場所で、若い才能を見抜いて、支えていた人がいたこと。
その大原孫三郎という大きな存在にも心動きました。
東京時代にすてらを書生として家においてくれる『イサ先生』という方が
これまた粋で!
可愛くてカッコよくて、凛とした生き方にうぅ~!となりました。
白いご飯が食べられること。
働けること。
誰かが見守ってくれていること。
そのひとつひとつを、ちゃんと受け取っている。
だからこの子は、どんなときでも前を向けるのかもしれない。
色んな試練はあったけど、かわいそうだとは思わなかった。
ただ、その生き方がきれいだと思った。
今は、選ぶことも、学ぶことも、自分で決めることが当たり前になっているけど。
それは当たり前にあったものじゃない。
前の時代の人が、歴史や文化があって、その先にこうして生きて入れらることに感謝です。
「最後の場面にたどり着いた読者が、悲しい涙を流すのではなく、幸せな笑顔になるような。いつか、書いてください。晴れの日の木馬たちの物語を。」
こんな時代でも夢を諦めない少女の話はきっと今の時代の人にも大きく響くものがあると思います。
逆境に負けずに文士を目指した少女の一代記。祈りのこもったこの1冊、ぜひ皆さまもご一読ください。
★★★★★
城崎温泉 泉翠 冨田 歩
