町田そのこさんの作品です。

町田 そのこ
本屋大賞を受賞後、安定して人間の繊細な心を書き続けてきた町田さんの新境地となるサスペンスです。
声なき声が届くなら、今度こそ記者を諦めない。
主人公のみちるは、地元タウン誌で働くライター。東京でのある出来事で週刊誌の記者を辞めた過去がある。そんな中、知った白骨死体遺棄事件。遺体と一緒に埋められていたメモには『ありがとう、ごめんね。みちる』のメッセージが。自分と同じ名前に興味をもつ。すべてから逃げたままの自分でいいのか。。この事件を追うことに決めた‐‐。
序盤のみちるの東京での挫折のくだりから、内容が重い‥そうだった‥町田さんは重い時は本当に重い人だった‥現代社会が抱える様々な事件。同じ日本で同じような教育を受け、自分にされたら嫌なことはしないとか。子どもでも分かるような当たり前の事が通じない人がいるのがずっと不思議で、怖くて。どうしてそんな事件が起きたのか、ノンフィクションかと思える内容にページをめくる手が止まりませんでした。
事件に関わっていく人の心の機微や人生模様で少し分かった気がします。
また町田さん自身のこれからも書き続ける、伝えることをどれだけ大事に思っているのかも感じられる素晴らしい作品でした。
『わたしたちの痛みは、一緒やんか。こっちの方が痛いとか、あっちの方が苦しいとか、比べるものやないよ。』
『「自分だったら」と想像し、痛みを理解しようとし、寄り添おうとするのは間違いではないが、そこには自分のものさしで人の苦しみを図っている危険性もあることを忘れないでほしい。』
『誰でもなく自分こそが、自分自身を深く愛し守れば、心を研ぎ澄ませれば、ひとは誰もが強く、うつくしくなれる。そうして得た強さこそが、他社にやさしく寄り添うことができるのだろう。』
グイグイ惹きこまれる作品をお探しの方、現代社会の問題を盛り込んだ作品で今を知りたい方、読み応えのある作品を探されている方に特におすすめの1冊です。埋もれてしまいそうな小さな声があるということ、多くの方に読んでいただきたいです。
★★★☆☆
城崎温泉 泉翠 冨田 歩