
内館 牧子
内館牧子さんの作品です。
やり残したことにケリをつけるのが、本当の終活だ。年金暮らしの原夫妻。妻の礼子はいわゆる終活に熱心だが、夫の英太は「生きているうちに死の準備はしない」という主義だ。そんな英太があるきっかけから終活をしようと思い立つ。それは家族や他人のためではなく、自分の人生にケリをつけること。彼は周囲にあきれられながらも高校時代の純愛の相手に会うため動き始める。やがて、この終活が思わぬ事態を引き起こし――。
70代の作者が書く高齢者小説、何とリアルなのだろう。終活なんて聞くと悲壮感も感じてしまいますが、痛快でした!ちょうど親世代の話だったので70歳がとてもパワフルなことを知っています。70代は老人のアマチュアって表現にクスッと。80代になると身体も動きにくくなり諦めがきくけど70代だとまだまだ感があって考えたくないってのが特に。
他人軸の終活、自分軸の終活。人の数だけ終活の数があり、いろんなことを考えてしまいました。人生でやり残したことををするのも終活だし、死ぬことや自分がいなくなった事を考える哀しいイメージの終活ではなく、自分の人生をより楽しむための生きがいだったり振り返りの時間としての終活には目から鱗で素敵だった。
『若いころは青かった。青さは新鮮だが、旨味は出ていない。垢のつかない青さはいいものだ。だが、それはその年代だからいいのだ。結構なトシをして「少年のような」だの「少女のまま」だのは、恥じてもいい。旨味が出ないことをなぜ誇る。男も女も過去の時間が作り上げるのだ』
いつかは自分にもやってくる終活。うっすらぼんやりでしか想像できていません。そんな自分にピシッと教訓を貰えた感じ。
こちらの作品は親世代、60,70代の方は特に共感が多く楽しんでいただけるかと思います。まだ終活は考えれない方も高齢者の気持ちが分かって面白いのでオススメです。
★★★★☆
城崎温泉 泉翠 冨田 歩