椹野道流さんの作品です。
正月の親戚の集まりで英国留学の思い出話を披露した孫娘(著者)に、祖母が「一度でいいからロンドンに行きたい、お姫様のような旅をしたい」と告げたことから、一族総出で支援する5泊7日の豪華イギリス旅行が決定!
だが、そもそも著者が留学で培ったのは「行き当たりばったり体力勝負の低コスト海外滞在」ノウハウで、高齢の祖母をお姫様のようにもてなす旅とは真逆のスキルだ。‐‐著者がまだ「コムスメ」だった頃の、「自己肯定感」にまつわる極上エッセイ!!
コレほんとにエッセイだっけ?つい確認してしまったくらい、今までの概念を壊されました。とんでもなく『非日常』の『豪華の限りを尽くした海外旅行』だったからです。それでいてお姫様である祖母のぶっとんだワガママっぷり。クセ強すぎで笑っちゃいます。
日本って親切な人が多いし、丁寧で、どこのお店に行ってもある程度のサービスのクオリティーは保たれていて。それは快適ではあるんだけど、特に感激することもなく日常になっていて。だけどそこが高級なお店であっても、小さな商店であっても関係なく、自分の中での想定しているサービスを越えたことをされた時に、つまりマニュアルではなくその人個人の+αを感じだ時に私は胸が熱くなってしまうんだけど。。
こちらのエッセイに出てくる規格外のホスピタリティーには言葉を失いました・・飛行機はファーストクラス!!ロンドン中心部の5つ星ホテル!!オリエント急行、行くのは高級デパートばかり!!まぁそれだけのお金出してるんだから当たり前だよね、なんて感覚が出ることもなく(←地味にすごくない?)プロの矜持というのか、、飛行機のCAさん、ホテルのバトラーのティムさん。チャーミングなドアマンにデパートの販売員さん。どの人にも「おもてなしの極意」というものを感じさせられた気がします。
願わくばいつか自分で体験してみたいものです。
特にホテルの方たちとバッドガールのやりとり。一流のサービスを本気で目指す人に、自分の知る限りの「一流」を惜しげなく授ける祖母姫。バトラーティムとの3人のやりとりはもうたまんないです。素敵!
祖母姫様の強烈な自己肯定感と美意識は、私の祖母にも通じるものがあって。実際は書いてある以上にとんでもなく大変だった旅なのも想像しやすく・・気の毒・・。それでも人生の先輩である姫様から出る教えの数々には心を刺さります!
「大切なのは、お祖母様に何が出来ないかではなく、何をご自分でできるのかを見極めることだと思います。出来ないことを数え上げたり、時間をかければできるのにできないと早急に決めつけて手を出したりするのは、結局、お相手の誇りを傷つけることに繋がりますから」
「本当に感謝しているなら、具合の悪いことをそのままにしてはだめよ。~~次に日本からお客さんが来たとき、この人が恥をかかないように、優しい思いやりがちゃんと報われるようにしてあげるほうがいいと思うわ」
「努力しなければ、ゼロのままだけど、百も努力すれば一か二になるでしょう。一でも違いは出るものよ。」
「楽をせず、努力をしなさい。いつも、そのときの最高の自分で、他人様のお相手をしなさいよ。オシャレも化粧も、そのために必要だと思ったらしなさい。胸を張って堂々と、でも相手のことも尊敬してお相手する。それが謙虚です。」
人と人が真っすぐに向き合う素敵な旅行エッセイです。笑いたい方、海外旅行が好きな方、素敵なおもてなしに興味がある方、やる気の出ない方、特におすすめです。最高の1冊だったので多くの方に触れてほしいです。
★★★★☆
城崎温泉 泉翠 冨田 歩