城崎温泉 泉翠 | 若女将の読書 | 阿川佐和子 | ことことこーこ |
2023.10.29
ことことこーこ
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阿川 佐和子

阿川佐和子さんの作品です。

まだまだ仕事がしたいのに…もう介護?!アラフォー長女の奮闘記!離婚して老父母の暮らす実家に戻った香子。専業主婦を卒業し、フードコーディネーターとしての新たな人生を歩みだした矢先、母・琴子に認知症の症状が表れはじめる。弟夫婦は頼りにならず、仕事も介護も失敗つづき。琴子の昔の料理ノートにヒントをもらい、ようやく手ごたえを感じた出張の帰り道、弟から「母さんが見つからない」と連絡があり…。

実際に認知症のお母様を介護した経験を基に書かれた阿川さんの書いた作品です。介護をテーマにした物語ってなんとなく暗い空気がただよっていて避けて通れないリアルさを感じて少ししんどくなってしまうのだけど。こちらの作品は阿川さんご本人のあったかさ、ハツラツさ、賢さ、素敵だと感じているものを主人公からも感じて、重くも暗くもならずに読めました。主人公もそのお母さんも明るくて、愛情深くて、こんな状況でも思い合ってるというのがすごく伝わってきました。

料理をしなくなった母が残してくれたレシピを再現していく引き継いでいくストーリー、仕事仲間の理解あるあったかい気遣い、忘れていく母のそれでも最期まで母でいてくれた娘を心配する様に感動しました。

『無邪気な子供に戻りつつも、自分が母親であるという自覚を捨てまいと戦っているのだ。だから私は母の母親にはなれない。私はずっと、母の娘だ。母の心配が絶えることのない娘なのである。そうでしょ、母さん。』

綺麗事だけでなくて、この家のように明るい認知症だったとしても、現実に自分の家族に降りかかってきたらとか想像しただけで怖いけど・・琴子のように振舞えたらいいなと思える素敵な主人公でした。

家族が認知症とだけ聞くと悲しい気分になりますが、心温まりユーモアもある、少しウルっとする素敵なお話でした。現実はイライラも悲しい事もあると思いますが、介護にもほっこりや笑顔もあるといいですよね。

阿川さんのユーモアや明るさを感じれるジメっとしていない介護本。介護が気になる方、家族の話を読みたい方に特にオススメです。

★★★★☆

城崎温泉 泉翠 冨田 歩

https://kinosaki-sensui.com/

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