宮本輝さんの作品です。
よき時、それはかつての栄光ではなく、光あふれる未来のこと。
いつか、愛する者たちを招いて晩餐会を‐‐九十歳の記念に祖母が計画した、一流のフレンチシェフと一流の素材が織りなす、豪華絢爛な晩餐会。子どもたち、孫たちはそれぞれの思いを胸にその日を迎える。徳子おばあちゃんは、なぜ出征が決まった青年と結婚したのか?そしてなぜ、九十歳の記念日に晩餐会を開くことにしたのか?孫の綾乃は祖母の生涯を巡り、秘められた苦難と情熱を知る‐‐。1人の命が、今ここに在ることの軌跡が胸に響く感動長編。
物語は東小金井にある中国の伝統的な四合院造りの建物から始まるのですが、この珍しい建物・空間に序盤からグィッと惹きこまれました。他にも美味しそうな食事の数々に高価なワイン、知る人ぞ知るお宝、ワクワクするものが次々に出てきて楽しい!
上流階級すぎで別世界というわけでもないのに、チラホラ垣間見ええる丁寧な暮らしに相手への気遣い。品格のある人の心地よさを随時感じられ穏やかで優しい気持ちになれました。
『見ていると幸福な気持ちになる、それはやがてモノではなく幸福そのものになる。そういうものを探し集めなさい。』
『まず自分への敬意。同席する妻や家族たちへの敬意。友人知己たちへの敬意。それから料理人や配膳係たちへの敬意。…つまり、晩餐会とは、きょう生きていることへの敬意。』
おばあちゃんの過去、関わってきた人たち、晩餐会をひらく理由。胸に沁み込み余韻が残ります。真っすぐ正しく真剣に生きてきたおばあちゃんが子や孫、教え子たちに与えた影響の数々。凛としていてすごく素敵で憧れます。
よき時、過去ではなく未来のこと…とてもいいお話でした。作者の方がインタビューで『この小説は、いろんな人生の詰まったおもちゃ箱ですよ』と語られていますが、まさに!大人のおもちゃ箱でした。ワクワクが止まらない!まだまだ読みたい!
いつまでも浸っていたいよき読書の時間を過ごしたい方、オススメです。
★★★★★
城崎温泉 泉翠 冨田 歩