千早茜さんの作品です。
戦国末期、シルバーラッシュに沸く石見銀山。天才山師・喜兵衛に拾われた少女ウメは、銀山の知識と道の鉱脈のありかを授けられ、女だてらに坑道で働き出す。しかし徳川の支配強化により喜兵衛は生気を失い、ウメは欲望と死の影渦巻く世界にひとり投げ出された—
昨年の直木賞受賞作です!戦国の銀山がテーマとあって、難しい内容ですらすら読めるような話ではないと思ったのですが、序盤から世界にひきこまれ一気読みでした!!
可愛げのない感想になりますが、少女だった小さな子が過酷な世界で、自分の道を辛いながらも貫く話なのかなといった予想通りの内容だったのですが、さすがの受賞作。臨場感だったり、主人公ウメの悔しさやあらがえない感じ、訴えてくる気迫や強さというのでしょうか。予想をこえてくるパワーに圧倒されました。
「しろがね(銀山)の女は三人の夫を持つ」と言われるほど、無病な男はいない過酷な労働。女もそれを承知で、夫や子をおくりだす。壮絶な生きる話でした。
またこの作品には、好きな人がいる何人もの男女が出てくるのですが。。その叶わさや切なさにも、時代を感じるし、本来の心から真摯に相手を想うってこれだよなぁって。。
今も女性にとって働くということで制限を感じる部分があるかもしれないけど、仕事も生き方もずっと多くの選択肢を選べるようになった。時代は確実に変わっていってる。全部を思い通りにするなんてことはないかもしれないけど。何を想ってどう生きるか、そこに自分の芯はあるのか、、なんだかそんな事を考える読書時間でした。
時代小説が苦手な方もこちらは読みやすいので、ぜひトライしてみていただきた1冊です。生きること、貫く強さ、覚悟。女性として生きるのが不便な時代に、生と性と死がこれでもかと濃密に、生命力溢れるたくましい姿を見せてくれたウメに、魅了されました。
★★★☆☆
城崎温泉 泉翠 冨田 茜