一木けいさんの作品です。
彼女は無邪気に、優雅に、意味もなく、他人を不幸に陥れる。「逃げなきゃ。この女のそばにいるのは危険すぎる」新人作家、汐田聖が目にした不倫妻の独白ブログ。ありきたりな内容だったが、そこに登場する「不倫相手の母親」に感情をかき乱される。美しく、それでいて親しみやすさもある完璧な女性。彼女こそ聖が長年存在を無視され、苦しめられてきた実の母親だった。ある時は遠い異国で、ある時は港の街で。名前も姿さえも偽りながら、無邪気に他人を次々と不幸に陥れる…。果たして彼女の目的は、そして、聖は理解不能の母にどう向き合うのか?
連作短編集で、読み進めるほどに不穏な雰囲気。じわじわと明かされていく英利子の正体。散りばめられている伏線が面白い。ただ、私の読解力では繋がりが回収できないところもあって謎も残っております…
本を読んでいるとたまに匂いまで想像がリアルにくる作品があるんだけど。これはそれ。短編ごとに舞台は変わるんだけど。時には異国のムッとした熱気とスパイスの香りだったり。薄汚い港町では生ごみやたばこの混じったような匂いが文字と一緒に入り込んできました。
悪と無垢がVSじゃなくて、持ち合わせた女性の話でした。無自覚で嘘をついてしまう人ってたまにいるけど。それの最強版がこの人なのかなと想像しながら読んでました。とんでもない人だけど、もしかしたらいるかもしれない、あり得ない人ではない。このジャンルはなんだろう…イヤミスってやつだろうか。心温まる読書ではないけど、人間の不可解さというか、欲深さというか…楽しめました!
ハラハラドキドキしたい方、不気味な話が好きな方、翻弄されたい方、純粋無垢なサイコパスってどんな人?と思われた方、オススメです。
★★☆☆☆
城崎温泉 泉翠 冨田 歩