城崎温泉 泉翠 | 若女将の読書 | 一穂ミチ | 光のとこにいてね |
2023.04.29
光のとこにいてね

一穂ミチさんの作品です。

たった1人の、運命に出会った

古びた団地の片隅で、彼女と出会った。彼女と私は、なにもかもが違った。着るものも食べるものも住む世界も。でもなぜか、彼女が笑うと、私も笑顔になれた。彼女が泣くと、私も悲しくなった。彼女に惹かれたその日から、残酷な現実も平気だと思えた。ずっと一緒にはいられないと分かっていながら、一瞬の幸せが、永遠となることを祈った。どうして彼女しかダメなんだろう。どうして彼女じゃないと、私は幸せじゃないんだろう…

直木賞の候補作なので面白さ保証されているとは思ってたけど。これまた途中で止まらなくての朝までコースでした。

裕福な家に育つ結珠とシングルマザーと団地住まいの果遠はそれぞれに家に事情を抱えていて。7歳・15歳・29歳といずれの時期も交流のあった期間は本当に短い。それなのにお互いを支えに惹かれ合う『名前のつけられない関係性』を二人の目線からそれぞれ交互に描かれています。双子のような、、不思議で強い結びつき。恋愛に近い感情に似ていて全く違うと思う。ただ強くお互いでないとといった思いをもった魂の片割れというか。恋愛みたいなそんな枠じゃないと感じました。

『社会に出てみたらわかる、結婚したらわかる、人の親になったらわかる……そういう予言じみた言い回しは卑怯だし、親が子に使うのは呪いに近いと思う。子どもはいつか親の人生をなぞるミニチュアだとでも言いたいのか。』

『傍にいてごはん食べさせて愛情かけるのは、誰だっていいんだよ。産んだ人間のすることだけが特別で尊いなんて思わない』

『人前で泣くのが恥ずかしいって子どもに教えんやろ。大人はいつから泣くのを恥ずかしがるんやろね』

『あなたにもあなただけが大切に思うものや秘密があって当然だよ。心の中の家に誰をどこまで入れるかは決めていいの』

『せっかく大人になったのに正しいほうを、幸せなほうを選べないなんて、選ばないなんて、そんなことがあるの?わたしは、そんなのいやだ』

タイトルの「光のとこにいてね」は本当にグッとくる。この言葉を発する心境、切実さとかピュアさとかこめられた思いにギュッとなりました。

子どもの頃はどうしようもなかったことも、今なら逃げてもいいし、立ち向かってもいいし、選択肢はいろいろある。この2人には、どうかもう我慢せずに光のとこにいてほしい。そう願わずにはいれませんでした。

余談ですが、それぞれが見つけたパートナーの藤野と水人が魅力的なのが本当に良かった。複雑なものを持った二人が選んだ人がちゃんと相手を尊重してくれる人で良かった。

言葉に表せない関係性を見たい方、考える読書をしたい方、読み応えある本が好きな方、特におすすめです。

★★★★☆

城崎温泉 泉翠 冨田 歩

https://kinosaki-sensui.com/