凪良ゆうさんの作品です。
その愛は、あまりにも切ない。正しさに縛られ、愛に呪われ、それでもわたしたちは生きていく。‐‐わたしは愛する男のために人生を誤りたい。
自由奔放な母の恋愛に振り回されてきた男子高生と、父親が不倫して出ていった女子高生。ともに心に孤独と欠落を抱えた二人は、惹かれ合い、すれ違い、成長していく。生きることの自由さと不自由さを紡ぐ、ひとつではない愛の形。
すごく良かったです・・重い話は好きではないのに、グイグイと惹きこまれて思いがけずの徹夜になりました。 男女二人の視点が交互に書かれていて、すれ違いのもどかしさよ・・舞台は風光明媚な瀬戸内の島。島の筒抜け間というか近すぎる人間関係の息苦しさ。
『お金で買えないものはある。でもお金があるから自由でいられることもある。たとえば誰かに依存しなくていい。いやいや誰かに従わなくていい。それはすごく大事なことだと思う』
『自分がかわいそうと思わなければ、誰にそう思われてもいいじゃないですか』
『何度でも言います。誰がなんと言おうと、ぼくたちは自らを生きる権利があるんです。ぼくの言うことはおかしいですか。身勝手ですか。でもそれは誰と比べておかしいんでしょう。その誰かが正しいという証明は誰がしてくれるんでしょう』
『誰かわたしを助けてほしい。でも誰もわたしにさわらないでほしい。わたしを弱い人間だと思い知らせないでほしい』
『わたしはなにを捨てて、なにを選べばいいのだろう。親、子供、配偶者、恋人、友人、ペット、仕事、あるいは形のない尊厳、価値観、誰かの正義、すべて捨ててもいいし、すべて抱えてもいい。自由』
胸にくるものは、すごく、すごくあるんだけど。何を言っても言葉の空回りや実体験してない自分から放つ言葉は決めつけな上から目線になってしまいそう・・感じたことをどの言葉を使ってもハマるものが見当たらない・・絶望も希望も、読んでいて苦しい、感情が溢れ出す作品でした。
プロローグとエピローグを読むと、印象の受け取り方が全く変わっていて。それもまた面白かった。
圧倒的な余韻。自分の人生を生きることの大切さ、メッセージ性の強い作品でした。沢山の方に手に取ってみていただきたい。オススメです!!
★★★★★
城崎温泉 泉翠 冨田 歩