遠田潤子さんの作品です。
バラが咲き乱れる家で、新進気鋭の建築家・青川英樹は育った。
「バラ夫人」と呼ばれる美しい母。ダムと蕎麦が好きな仕事人間の父。母に反発して自由に生きる妹。英樹の実家はごく普通の家族のはずだった。だが、妻が妊娠して生まれてくる子が「男の子」だとわかったとたん、母が壊れはじめた…。
なんじゃこりゃ!!おもしろ~~!!最初は少し性格の合わない嫁姑の描写に、大なり小なりどこでもあるよね・・ってあるある~と読んでいましたが、バラ夫人のぶっ飛んでいく壊れっぷりに今は懐かしの『冬彦さん』や『昼ドラ』の香りにゾクゾク&ワクワク(笑)この家族がどうなっていくのか気になって気になって寝るのを惜しんで読みました。
最初は母の愛のトリッキーぶりを楽しんでいたのですが、読み進めるうちにわかる母がそうなってしまった理由に。辛いです。
『負の連鎖』という言葉はよく聞きますが、本当に連鎖を回避する方法はないのだろうか。出てくる人たちそれぞれが持っている満たされない気持ちややりきれなさも分かる。異常だと思うその行動でも、背景がみえてくると少しの共感。
大切な人を大切にする方法ってみんなどこで覚えていくんだろう・・正解はないだろうけど、良かれと思っても相手にとってはダメだったりする。簡単なようで人を大切にする方法ってシンプルなことだと思うけど、それが出来ていない人や瞬間、出来事って自分含めてあるんだろうと思うと恐ろしい。
子どもへの執着、嫁姑問題、母と娘、夫婦。それぞれに怒涛の如くおしよせる問題に目が離せない!女たちの複雑な心に比べると男たちのなんとお気楽なことか。
作中では、長女が長男へ持つ劣等感というのに特にグィーと引っ張られた。素直で鈍感な兄。同じような状況でそう思えるまぶしさ。私自身、周りの人の考えに尊敬とともに劣等感が芽生える瞬間っていうものがあって苦しい時もあって。。(一瞬ですよ!)同じ家族であればいかほどか・・と。
インパクトある作品で、夢中になって楽しめました。こういった趣向の作品はあまり読んでこなかったので新鮮でした。オススメです!!
★★★★☆
城崎温泉 泉翠 冨田 歩