若女将の読書 | 劇団ひとり | 浅草ルンタッタ | 城崎温泉 泉翠
2022.11.06
浅草ルンタッタ
浅草ルンタッタ
浅草ルンタッタ
劇団ひとり

劇団ひとりさんの12年ぶりの作品です。

行き場をなくした女たちが集う浅草の置屋「燕屋」の前に、一人の赤ん坊が捨てられていた。かつて自らの子を亡くした遊女の千代は、周囲の反対を押し切って育てることを決める。お雪と名付けられた少女は、燕屋の人々に囲まれながら、明治から大正へ、浅草の賑わいとともに成長する。楽しみは芝居小屋に通うこと。歌って、踊って、浅草オペラの真似をして、毎日はあんなに賑やかで幸せだったのに。あの男がすっかり台無しにした。

題名から想像するのは明るいイメージ、人情あふれる町で捨てられた子どもが歌手として成功していくストーリーかなと。けど中身は壮絶な出来事の連続。イキイキとした登場人物に感情移入し、心揺さぶられ。悲しくて切なくて。なのに頭の中はなぜかルンタッタ♪が占拠する。どん底に生きる人たちの辛い境遇とたくましい生命力。そんな中でも何かしらの「救い」や「楽しみ」があって。展開が気になってあっという間に読み終えていました。

大正時代の生々しい現実と、人々の憧れ・娯楽、人情あふれた浅草という町。日本独特の風俗は綺麗事ではないし、その時代その時代にいる特権階級の人の横暴さは本当にイライラする。様々な困難を乗り越えていく人間のたくましさや、血がつながっていなくても存在していた絆には感動して応援せずにはいられなかった。小説とはいえ当時の浅草の雰囲気を覗き見できたのも面白い!

普段本を読まない人や苦手意識がある人でもハードルを感じずに読めるはず。躍動感あふれるエンタメ小説を求めている人にピッタリです。サクッと読めますが大正ノスタルジーに人情、読みごたえはしっかりあります!

★★★☆☆

城崎温泉 泉翠 冨田 歩

https://kinosaki-sensui.com/

ご予約