若女将読書 | 錦見映理子 | 恋愛の発酵と腐敗について | 城崎温泉 泉翠
2022.06.16
恋愛の発酵と腐敗について

錦見映理子さんの作品です。

太宰治賞作家が描く大人の恋の群像劇。
人生の経験を積んだ大人でも、恋愛だけは不器用なまま。不倫の恋に破れ、勤めていた会社を辞めた万里絵。知らない町で、夢だった喫茶店を開き、ここで穏やかに暮らしていこうと決心する。そんな矢先、店に奇妙な男が現れる。その男・虎之介は、商店街の一角にできたパン屋で働くパン職人。仕事においては高い技術を誇り、実直な職人気質な男だが、こと女に関してはだらしないことこの上なく、街の女達が翻弄される。そんなある日、自由奔放な虎之介に振り回されてきた女達に厳しい現実がつきつけられる。その後、女達に予想外の結末が訪れる。

この本好きです!
いるよね。なんかモテちゃう、だらしない色男。そんな彼に翻弄される女たち。どいつもこいつも最悪。だけど憎めない。

パン生地の発酵と腐敗のような紙一重な大人の恋愛模様。読んでてキュンはしないけど、人間臭さにクラクラして胸がいっぱいになる。そして無性にパンが食べたくなる。徹底した女性目線での大人の小説です。

『あなたはいいのよ、まだ若いし。でも年取ってから怪我すると、もう一生傷が治らないって事もあるんだよ。今はいいけど、火遊びしていられるのも、あと少しだけよ』

『こんなはずじゃなかった、と思ったときにはもう遅かった。いつの間に、どのようにして離れられなくなっていったかはっきり思い出せなくて、気づいたら四年近く経っていた。そして突然、それは終わった』

人間の弱さや愚かさ、苦しさ、痛々しさ。そして前向きさだったり、意外と強いみたいな。人間の素敵なところがたくさん詰まってました。だから人生って楽しいんだよな。

たくましく前向きな話が読みたい方、人間臭い話が好きな方、いろんな恋愛を経験してきた方や泥臭い恋愛も好きな方、オススメします。

★★★★☆

城崎温泉 泉翠 冨田 歩

https://kinosaki-sensui.com/