近藤史恵さんの作品です。

大阪で70年続く和菓子屋の二人姉妹。姉の小梅は家業を継ぐため進学せず、毎日店に出て和菓子作りに励む働き者。妹のつぐみは自由奔放。和菓子屋を「古臭い」と嫌い、大学で演劇にのめり込みながら、中東の国に留学したいと言って母とよく喧嘩。ある日、43年前に亡くなった曾祖母の魂が何故かつぐみの身体に乗り移り、「ある手紙をお父ちゃんの浮気相手から取り戻してほしい」と告げてきた。ある和菓子屋一家が織りなす、明治と令和をつなぐ物語。

とても不思議で、優しく切ない家族物語でした。

時代によっての考え方や生き方の違い、自分自身も使ってしまっている言葉も見ようによっては、偏見や差別になりうるといった気付きにハッとさせられました。

「偏見とは自分の目で見ないで、頭の中にある人物像を勝手に見てしまうことなのだろうか」

「たった一度の人生だから、やりたいことをやった方がいいと言う人だっていいるけれど、たった一度の人生だからこそ、よく考えて行動したいのだ」

姉妹二人の関係性もいいし、不思議なんだけど妙にリアルな部分もあって楽しく読めました。『大人のライトノベル』といった感じで読みやすいです。やりたいことがなかった姉が曾祖母との出会いによって変わっていくところも素敵でした。

自分らしく生きることを模索中の方、曾祖母が夫の愛人にあてた手紙の中身が気になる方、特におすすめします。

★★★☆☆