若女将の読書 | 中島京子 | やさしい猫 | 城崎温泉 泉翠
2022.04.29
やさしい猫
やさしい猫
やさしい猫
中島 京子

中島京子さんの作品です。

シングルマザーの保育士ミユキさんが心惹かれたのは、八歳年下の自動車整備士のクマさん。出会って、好きになって、この人とずっと一緒にいたいと願う。
当たり前の幸せが奪われたのは、彼がスリランカ出身の外国人だったから。
大きな事件に見舞われた小さな家族を、暖かく見守るように描く長編小説。

情けなく恥ずかしいですが、知らない真実だらけでした・・こちらの作品は外国籍の人に対する日本の姿勢を問う裁判の話です。
入管管理制度、入管管理局、技能実習生、外国人労働者、就労ビザ、在留資格などなど。

高校生のマヤが『きみ』に問いかけるスタイルでの語りなので、とても分かりやすく理解できました。

日本と外国人の在り方に真剣に向き合わなければいけないことを知るきっかけになりました。

日本は礼儀正しく親切で、夜道を歩いていても安心で。素敵な国だと思っていました。日本の頭のいい人たちが決めた法律はしっかりしたものなんだろうと疑うことなく信じていました。だけど日本もまだまだなところがある。変わらなきゃいけないところがある。

人を人と思っていない扱いをして、理不尽なことが行われている。犯罪をおかした人でも刑期が決められているのに、そこでは悪いことしてない人でも期限無く収容され不当な扱いを受けていること。人の人生を左右してしまう決定が職員1人の際限で決められてしまうこと。日本で生まれ育っても国籍もとれずに県外への移動も働くことさえ出来ない人がいること。

「日本人は、あそこでなにが起こってるか、ぜんぜん知らないよね」

法律という大きなものに対して自分に出来ることはない、自分とは関わりのないことと思わず、少しだけでもまずは知る、関心をもつ。そうした人が増える事で国は動いていくのではないかと思います。知らないことは罪ではないけど、無知ゆえの悪意のなさで傷つけ苦しんでいる人がいること、感慨深い読書となりました。

国籍は違えど真面目に頑張っている人とは共に平和に共存していける世界であってほしい。

重いテーマでしたが、幸せになりたい一途な思いを諦めずに立ち向かう家族の愛には感動しました。最後の裁判のシーンは臨場感たっぷりでたまりません・・

多くの方に読んで頂きたい、是非!!小説の力はすごい。きっかけを与えてくれる作品です。

★★★★☆

城崎温泉 泉翠 冨田 歩

https://kinosaki-sensui.com/

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