窪 美澄さんの作品です。
家庭内暴力をふるい続ける父親を殺そうとした過去を封印し、孤独に生きる文也。ある日、出会った女性 梓からも、自分と同じ匂いを感じた。家族を「暴力」で棄損された二人の、これは「決別」と「再生」の物語。
酒を飲んでは暴れる父に対して明確な殺意がある、十三歳で刑罰に問われない事は知っているが、僕が父を殺せばもう母とも妹とも暮らすことは出来ないだろう。それが分かっていても僕は父を殺そうとしている。今だ、と。
テーマからして重たいのは分かっていました・・が、重たい・・壮絶な暴力のシーンは生々しく、序盤から衝撃の重たさ・・これ窪美澄さんじゃなかったら手に取りませんでした。が、こういったテーマの事ってしんどくなるので時間がかかって読み切ることが多いのに、これは不思議とトントンと読み切れてしまいました。
人は過去と決別し、今と未来だけをみて生きていけるのだろうか?
自分のルーツとなる故郷や親を思い出さないなんて出来るのだろうか?
誰でも許せないことや忘れることができないことはあると思う。が、幼いころに背負った大きなものをもつ人の、そのことへの向き合う事への苦しさは想像以上でした。
虐待ではなくても親との関係に悩んでる人は実際に沢山いると思います。自分で親は選べないけど、自分で新しい家族は作ることは出来る。辛く悲しい過去は消えないし、変えられないけど、人との出会いによって未来は変えれる。簡単な事ではないけど自分で変えていけるものは絶対にあるんだという力強いエールを感じました。明日への踏み出す力が湧いてくる話です。
虐待という重たい話がテーマですが、引き込まれてしまうので知り合いにも紹介しやすいです。ご興味をもたれた方はぜひ!
★★★★☆
城崎温泉 泉翠 冨田 歩