若女将の読書 | 琥珀の夏 | 辻村深月 | 図書室のある宿 | 城崎温泉
2021.11.22
琥珀の夏
琥珀の夏
琥珀の夏
辻村 深月

辻村深月さんの作品です。

大人になる途中で、私たちが取りこぼし、忘れてしまったものは、どうなるんだろう。
封じられた時間のなかに取り残されたあの子は、どこへ行ってしまったんだろう。かつてカルトと批判された<ミライの学校>の敷地から発見された子どもの白骨死体。弁護士の法子は、遺体が自分の知る少女のものではないかと胸騒ぎをおぼえる。小学校の頃に参加した<ミライの学校>の夏合宿。そこには自主性を育てるために親と離れて共同生活を送る子どもたちがいて、学校ではうまくやれない法子も、合宿では「ずっと友達」と言ってくれる少女に出会えたのだった。もし、あの子が死んでいたのだとしたら・・30年前の記憶の扉が開き、幼い日の友情と罪があふれだす。

重い重い話でした・・苦しくなってなかなか進めれず、ただミステリー要素も気になるので真相を知りたく読み切った感じです。

子どもたちの中で流行ってるおまじないがあって、泉に宝物を流したら願いが叶うというもの。幼稚園の女の子が親と別れる時にもらった大事な絵の具を泉に溶かしながら「抱っこしてほしい。迎えにきてほしい。ミカって呼んで、手を握ってほしい。お母さんにさわりたい。一緒にいたい」って願うんだけど。願い終わると、大事な絵の具を使ってしまって、それにも悲しくなって泣いてしまうシーンがあって。序盤に。その切実な願いに号泣ですよ。
幼い子どもの当たり前の心の叫びで。でも、それを普段は口に出すことはいけないことってなんとなく理解して言えなくて。

親が子どもの成長のために、よりよい道を用意してあげたい気持ち、分かります。他人には分からない葛藤や理由もあるんだろう。子どもとべったりいるのがいいとも思わない。過ごす時間に愛情が比例するとは思わない。だけどこんな小さい子にこんな思いさせるのは・・ダメでしょ・・

親子分離、カルト、ミステリー、いじめなどいろんな要素があるんだけど、私は親子分離の部分に強く反応してしまって冷静に読めませんでした。

少しネタバレになりますが、赤ちゃんの頃から分離して育った親子の会話で。お母さんが大人になった娘に「一緒に住む?」娘「今さらいいよ」母「え?もしかして一緒に住みたかったの?」

って会話があるんだけど。すごく些細なシーンなんだけど。お母さんそりゃないって!!子どもの気持ちもっとみてやってよ。子どもの世界の狭さを分かってやってよ。何されたって親の手を取りたいのが子どもなんだって・・ぶっ飛ばしてやろうかと思いました・・

「鈍いほどの頑なさで揺るがない」これはカルト的なものをとてもよく表しているなと思いました。

女の子の心理描写もすごく上手で。小学生女子特有の人間関係。読んだら女子はきっとなんか分かるなぁって世界感がありました。子どもにとっての世界の狭さを思い出しました。今思うと小さな悩みなのに必死に悩んでた小さかった自分を思うとなんだかほろ苦いような、切ないような気分になりました。

「正しさ」という「危うさ」。正論を押し付けてないか?身勝手な大人になってないか?不条理な大人になってないか?自分に問答しながらの作品でした。

「ずっと放っておいたくせに」

「寂しいものは寂しいし、悲しいものは悲しいよ」

「大人であれ子どもであれ、人にはそれぞれ、土足で踏み込んではならない場所がある。そこに踏み込んで、ましてや、他の子たちの目の前に晒すなんて、そんなの許されない行為だ」

親子や教育について改めて考えたい人、子育て中の方には一層感じるものがある1冊です。幼少期の自分を振り返ってみたい人にもオススメします。

★★★☆☆

城崎温泉 泉翠 冨田 歩

https://kinosaki-sensui.com/

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