凪良ゆうさんの作品です。
愛ゆえに、人は。
下宿すみれ荘の管理人を務める一悟は、気心知れた入居者たちと慎ましやかな日々を送っていた。
そこに、芥と名乗る小説家の男が引っ越してくる。彼は幼いころに生き別れた弟のようだが、なぜか正体を明かさない。
真っすぐで言葉を飾らない芥と過ごすうち、周囲の人々の秘密と思わぬ一面が露わになっていく。愛は毒か、救いか。本屋大賞受賞作家が紡ぐ家族の物語。
あらすじではサラッと書いてるけど、芥と名乗る小説家が引っ越してくる経緯がまず怖い・・何この人?!乱暴な感じで嫌だなと思ってたんだけど、悪気はなく言葉以上の意味をもたないということを知ってからはクセになってきました(笑)
それにしても、すみれ荘という名前やタイトルに騙されました。ほのぼの話ではありません。住人達も実は闇を抱えているし、一悟の母も自分になにかを内緒にしている様子。読んでいてザワザワしてきます。様々な愛のカタチ、愛の毒を見せられました。
愛情という言葉の危うさに唸ってしまいました。愛ってつくづく美しいだけじゃない。
スタート地点から展開があって読みやすくて、兄弟の会話のテンポもいいし、ちょうどいい毒具合で好きな感じでした。
『罪は罪で、悪は悪で、愛は愛で、単純であってくれれば楽なのに。』
短時間で読める話を探している方、人間の複雑さを味わいたい方、軽い毒を嗜みたい方、家族の話を読みたい方にオススメします。
★★★★☆
城崎温泉 泉翠 冨田 歩