古内一絵さんの作品です。
老舗ホテルで働く涼音は、念願叶って憧れのマーケティング部サービスチームに配属された。喜び勇んで、アフタヌーンティーの新企画を出したものの、パテェシエ達也に「目新しければいいってもんじゃない」と冷たく却下される。『最高のアフタヌーンティーってなんだろう?』
大好きだったマカンマランシリーズ以来の古内さん。今回は老舗ホテルで働くアフタヌーンティーチームのお仕事小説です。アフタヌーンティーを作る人・考える人・食べる人たちの物語。
四季折々の庭園を眺めながらいただく贅沢な季節のお菓子たち。絶対に必要なものではないけども、それがあると豊かになる心と時間。
「お菓子はご褒美。だらしない気持ちで食べてはいけない」
「人が生きていくのは苦いもんだ。だからこそ、甘いもんが必要だ」
戦争孤児だったおじいちゃんの話に、当たり前のようにおやつをダラダラ食べていた自分は目から鱗でした。
憧れの先輩が産休をとり幸せかと思いきや、孤独で苦しんでいるシーンも強く心に残っていて。女性がキャリアを積むこと、結婚や出産の関門、自分も思い当たる過去があり、懐かしく思いました。女性にとってその節目に悩む人も多いと思います。
誰かを嫌いになりそうなとき、その人のしてくれた行動や優しさを思い出したい。簡単なことじゃなく覚悟の要ることだけど。
「自分に都合のいい面だけじゃなくて、できるだけ物事の美しい面を見るように心がけよう」
「どれだけ努力したところで、結局のところ、人は自分の物差しでしか物事を量れない。しかし言い換えるなら、この世の中のすべての事物をどう捉えるかは、すべて本人次第ということになる」
全体的に読みやすいですが、いろんな社会問題がうまく取り入れられていて、気づきを与えられた良い読書となりました。生きづらさを抱える方にそっと寄り添ってくれる優しい文章。素敵な作品です。
温かい文章を読みたい方、男性にも読んでみてほしいし、特に女性は響くことが多いかと思うし、つまりは皆様におススメします。
★★★★☆
城崎温泉 泉翠 冨田 歩