村山由佳さんの作品です。
つらいことから、どうして逃げちゃいけないの?
『夢の田舎暮らし』を実現すべく突然、仕事をやめてきた父と、いじめが原因で不登校になった小5の雪乃は曾祖父母のいる長野に移り住む。仕事を諦めきれない母は東京に残ることに。
胸いっぱいに苦しい思いを抱えているのに吐き出せない雪乃。そんな雪乃の心を溶かしたのは、見守ってくれる家族、長野の大自然と、地元の人々、同級生の大輝。
とにかく家族の見守る目が優しい!雪乃のために思って伝えていく言葉に私自身沁みることが沢山ありました。
母の英理子の聡明さ!!言葉の伝え方が素晴らしい。自分の気持ちを的確に適切に相手に伝えるってなかなか出来る事じゃないし憧れるわ・・
「<頑張り>っていうのはさ、そういう面白さを追求する時の為にあると思うんだ。だからって頑張りすぎちゃダメなんだからな。今よりちょっとだけ、くらいが肝腎。俺はさ、雪乃、つくづく思うんだよ。<今よりもうちょっとの頑張り>は、その人を美しく、かっこよくするもんなんだなぁ」
大らかな父の娘への見守りも好きだけど、そんな父だって曾祖父母にとったら孫。おじぃが父をたしなめる言葉の数々も流石の年長者の言葉で、厳しい言葉って有難いものだなと愛情を感じました。
そして田舎での暮らしや風景が厳しさと共に穏やかに書かれています。田舎ならではの年配の方の常識と違ったものへの厳しい目や閉塞感、悪習。優しさの中にも厳しさありのメリハリも良い。
娘がいるので、雪乃ちゃんのことは応援しながら読んでしまうんだけど、、心の傷も分かるんだけど。学校も変わって土地を変えてもまだ行けないの?!学年が変わってもまだ?!ついレールに乗せたくなってしまって・・見守るって難しいですね。
“楽しいとは、また明日、の明日が早く来ればいいと思うこと”
単純だけどすごく大切な事。
少しずつ少しずつ進んでいく再生のお話。
胸に染みる話が読みたい方、農業に興味がある方、頑張る気力のない方、子どもがいる方、温かい話が読みたい方、成長ストーリーが好きな方にオススメします。
★★★★☆
城崎温泉 泉翠 冨田 歩