辻仁成さんの作品です。
『離婚して10年、そして、私はようやく恋をした』
パリで暮らすシングルマザーのマリエ(孫あり)と、投資グループを主宰するアンリ(60歳越えのダンディー)との大人の恋愛小説。
フランス映画の少し独特な感じって分かりますかね、、アレを最初に感じて少し読みにくさを感じたのですが、パリ在住の辻さんならではのフランスの空気感や設定にすぐ夢中になってました。
恋に夢中になって浮かれているマリエが、アンリの素性を怪しみだして不穏な雰囲気に、さらに自身がコロナに羅漢。
信じるに値する人なのか?自分の目を信じたい。葛藤。でも・・
こんなにも不穏な相手だったり、『信じる』にフォーカスした小説はなかなかないかも。
恋愛物は自分の価値観に当てはめて読んでしまう事が多いのだけど、これは当てはめようもないことが多くそういった点でも面白く読めました。
『恋は一時的な自己喪失状態を示し、愛は永遠なる自己中心主義の喪失を示す。もし、愛だったものが壊れて夫婦が別れたとする。それは信じていたものが愛ではなく恋だったというだけのことだ』
マリエが選んだ結末をぜひ読んで頂きたいです。海外の古い映画を見るような美しさのある物語でした。
大人の恋愛に興味のある方、恋と愛の違いが知りたい方、パリの空気に包まれたい方、2021年ならではの(コロナ禍)恋愛が気になる方、純愛が好きな方に特にオススメします。
★★★★☆
城崎温泉 泉翠 冨田 歩